私は、肘掛け窓が好きだ。
肘掛け窓は、床に座った姿勢で眺望を得られる窓で、床から45cm程度上がったところから開口がある。
ちょうど、窓の下枠に肘を掛けることが出来るのでこの名前が付いた。
寺社・数奇屋・書院などの伝統建築における肘掛け窓
肘掛け窓はその特性から、和室でよく見かける。
和室が2階の場合には、安全のため粋な窓手摺が必要になる。
そんな肘掛け窓には、風鈴がよく似合う。浴衣と団扇がよく似合う。
蚊遣りの瀬戸物も外せない。いつの間にか猫も寄ってくる。
ふと気が付くと、窓の傍で浴衣が何か口ずさんでいる。
粋な浮世絵にも描かれる肘掛け窓
♪惚れさせ上手なあなたのくせに、諦めさせるの下手な人♪ ヨッ!
肘掛け窓には、粋な都々逸がよく似合う。
窓にしなだれかかっても良し、窓枠に腰掛けても良し。
艶っぽい都々逸窓は、浴衣の情感をしっかり受け止める。
このように、都々逸窓には「掃き出し窓」や「腰窓」とは一線を画した風情が漂っている。
忘れてはいけない文化の風景を、都々逸窓は私たちに見せてくれている。
建築家にとって、開口部(窓)はいつも最重要課題のひとつである。
採光、採風、眺望、断熱性等の機能面はもちろん、時にはその窓が放つ抒情味までも加味して、最適解を探し出す。だから、窓は面白いし骨が折れる代物でもある。
モダンな住宅建築における美しい都々逸窓
さて、浴衣の声がまた聞こえてきた。今度は三味の音もついている。
♪枕出せとは、つれない言葉、そばにある膝、知りながら♪ ヨッ!
いやぁ、都々逸窓、だから私は好きだ。