数寄屋建築探訪

昨日、建築士会主催の木造塾に参加しました。
鎌倉市にある「旧山本条太郎別荘」という数寄屋建築を見学して来ました。

実は3週間前に同じ木造塾で「数寄屋と茶室」をテーマにした講習があり、
その受講者を対象に実地見学会として開催されたものでした。

戸主の山本条太郎という人は大正~昭和期の衆議院議員であり、満鉄の総裁をも務めた大人物で、
別荘は大正7年に完成した立派な数寄屋造りの建物でした。
大正7年完成で現存しているということは、関東大震災をくぐり抜けた奇跡の木造大邸宅といえます。

この手の建築見学というのは、やはり専門家のガイドが付いていると理解と感動が格段に増すものです。
今回も座学講習の時の先生が、分かり易く事細かに説明してくれたので、
数寄屋造りと書院造りのディテールの差異がはっきりと分かったり、
本格的な茶室の空間体験もさせてもらったりと、大変勉強になりました。

茶室の床柱

さて、私個人としてはこの時期に建てられた素晴らしい建築物を見るたび、
いつも感激するのがガラスです。今では作られることのない、面がユラユラした単板ガラス。
大袈裟に言えば、外の風景が蜃気楼のように朦朧となるあのガラスです。

製造技術の大幅な進歩によって現在のガラスの方がより平滑でより頑丈になりました。
ペアガラスによる断熱性向上、強化ガラスによる安全性向上と機能性は格段にアップしました。
しかしあの質感は捨て難いものがあります。木製サッシにユラユラ朦朧ガラス、
これこそ私にとっては非常に贅沢な近代文化の象徴なのです。

ユラユラガラス

ま、現代人の現代住宅にとって、快適性を担保する性能の向上は絶対的なものですから、
今後もガラスメーカーの試行錯誤がユラユラ方面に向いていくとは考え難いものです。

今回のような立派な建築物からどのような要素を自分の設計に活かすのか、
ここが苦労のしどころであり、楽しいところでもあります。


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